遺言の種類

民法上は次のような遺言書の形式を定めています。

しかし、一般の方は、自筆証書遺言公正証書遺言の2種類だけ知っておけば十分です。

 

1 自筆証書遺言

2 公正証書遺言

3 秘密証書遺言

4 死亡の危急に迫った者の遺言

5 伝染病隔離者の遺言

6 在船者の遺言

7 船舶遭難者の遺言

8 在外日本人の遺言 


自筆証書遺言と公正証書遺言どちらがいい?

    

自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 

 全部手書き

署名・日付・押印が必須項目

訂正方法が法律に定められている。

公証人の前で口述、公証人がそれを筆記する。

(事前に原案を打ち合わせる必要がある)

当日は証人二人の立会が必要

費用

かからない

(専門家に依頼した場合の報酬は必要)

公証人手数料がかかる

(専門家に依頼した場合の報酬は必要)

保管 特に規定なし

原本は公証役場にて保管

遺言者は正本(及び謄本)の交付を受ける。

正本等の保管方法に規定なし

相続開始時の

手続き

家庭裁判所の検認を受ける。
正本を持って直ちに手続可能

 リスク

紛失,改ざんのおそれ

偽造等を疑われるおそれ

形式的要件の不備による無効のおそれ

特になし

 

1 自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴

  それぞれの特徴を表にしました。

  一番の違いは費用と相続開始後の手続です。

2 作成方法

  自筆証書遺言は、すべて手書きでなければなりません。その際、書き損じがあれば、定められた方法により訂正しなければなりません。

  さらに、自筆証書遺言は、最後に日付と署名、押印が必要です。これらがないと遺言としては無効なものになります。

  公正証書遺言は、遺言者が口述したものを公証人が書き取るということになっていますが、申し込んでその場でできるというものではありません。まず始めに原案を起案して公証人と文面について打ち合わせます。(その際戸籍や財産目録を提出する必要があります。)

  その打ち合わせた内容に即して公証人が正式な文面を作成し、それを遺言書作成当日に遺言者が証人二人の立会のもと、公証人の前で読み上げ、それに公証人が署名して完成します。

  一見公証役場で作成する方が面倒に思えますが、自筆で有効な遺言を書こうと思えば、そのくらいの手間は避けて通れません。

2 費用

  公正証書遺言にすると、財産の内容によって公証役場に支払う数万円の費用がかかります。

  自筆証書遺言の場合は、特に費用はかかりません。

  なお、自筆・公正証書のどちらも、文章の起案を行政書士等専門家に依頼した場合、その報酬は別途かかります。

3 保管

  公正証書遺言を作成すると、原本は公証役場に保管されますので、紛失や改ざんの心配はありません。作成した本人には、正本と必要に応じて謄本を交付してもらえます。

  自筆証書遺言の場合は、ご自分の責任で保管することになります。  

4 相続開始後の手続き

  公正証書遺言の場合、遺言者の死亡後、ただちに遺言書の正本を用いて各種手続が可能です。

  自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認という手続を経なければなりません。これは相続人の誰かが家裁に申し立てることで、相続人らの前で裁判官が遺言書を検認するという手続です。検認はすべての相続人に対して通知されるため、遺言の内容によっては紛争がすぐに発生する可能性もあります。

5 リスク

  自筆証書遺言の場合は、形式の不備により無効になったり、自力で作ることによる内容の不備によってかえって紛争を生じるというリスクが高くなります。また、偽造の疑いをかけられたり、作成当時の遺言者の判断能力を問題にされるおそれもあります。

  なにより、紛失や改ざんの心配がぬぐえません。

  その点では公正証書遺言ではそういったリスクはほとんどないといってよいでしょう。

6 結論

  文面まで決まっていて、上記のリスクもクリアできるならば、手軽で費用のかからない自筆証書遺言の方がよいという場合もあります。自筆証書遺言の長所は、手書きであること。何より遺言者本人の想いが筆跡から直に伝えられる意義は大きいです。

  しかし、誤字脱字が命取りになる遺言の性質や相続開始後の円滑な手続やリスク管理という点から考えると、一般的には公正証書遺言の方をお勧めすることがほとんどです。

  もし自筆証書遺言を書くのであれば、その場合こそ上記のリスクを減らすために、専門家のチェックを受けることが必須といえます。

  また、公正証書遺言においても、公証人は、具体的な分け方までアドバイスしてくれるわけではありませんので、円満な遺言を残そうと思えば、専門家に相談することが安全です。結局その方が早く解決できるでしょう。

  専門家への報酬は別途かかります。自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方高めに設定されていることが多いです。