ここでは後見制度について解説いたします。
判断力が不十分になった本人に代わって財産管理等の事務を行う制度です。
超高齢社会への移行に伴い、65歳以上の認知症の人口は平成24年で462万人、認知症と正常の中間の人口は400万人という推計値が出ています(厚生労働省)。また、判断力不十分とは、知的障がいや交通事故によるものもありますので、実は意外に身近で誰もが必要となる可能性があるテーマなのです。
これまでは、事実上同居の家族が身の周りの世話も含めて行ってきましたが、家族の高齢化や居住形態の多様化に伴い、介護者による財産管理のトラブルが顕在化しやすくなってきたのです。
後見制度は、生活上の様々な手続きや契約を本人に代わって行う人を正式に決める手続きです。それにより、銀行や病院・施設等の第三者にとっても、周囲の親族にとっても安心してスムーズな手続きを進めることが可能になるのです。
つまり、判断力が低下した自分の周囲でトラブルが起きることを避けるためには、後見制度をうまく活用することが大切だといえます。
Q 後見を利用しなくても銀行の手続きは同居の家族がしてくれるし、必要をあまり感じないのですが。
A 同居の家族ができたのは、判断力が残っていて、本人から家族へ委託があったからかもしれません。しかし、実際には、そういったことが曖昧だったために後々ほかの家族から使い込みを疑われたりする事例は頻繁に出会います。
まとまったお金が必要になって解約等ということになれば、金融機関も慎重になりますので、そのとき初めて後見を進められることも多いです。
法定後見制度 | 任意後見制度 | |||
類型 | 後見 | 保佐 |
補助 |
類型なし(契約の中でサポート内容を決める) |
本人の判断力 |
心神喪失の常況 | 著しく不十分 |
不十分 |
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本人が制限される行為 |
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本人にできる行為 |
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代理人 |
後見人 | 保佐人 | 補助人 |
任意後見人 |
代理人にできること |
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代理人にできないこと |
身分行為 |
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代理人の監督者 |
後見監督人 |
保佐監督人 |
補助監督人 |
任意後見監督人
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監督者のすること |
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【即効型】 任意後見契約を締結後、すぐに家裁に申し立てて後見人になるタイプ
当事務所では、【即効型】の任意後見契約はお勧めしていません。
【即効型】は、任意後見契約締結と同時に後見を開始しようとするものです。つまり、本人の判断力が相当低下している状態のはずです。そのような状態で本人が任意後見契約のような複雑な契約を結べること自体矛盾している可能性が高いからです。
このような場合は、法定後見制度(後見・保佐・補助のいずれか)のご利用をお勧めします。
【将来型】 任意後見契約を締結するのみで、その後本人の判断力が低下した時期に家裁に申し立てるタイプ
これが制度上想定されていた任意後見の基本的な利用方法です。ただ、この場合の問題点として、本人の状況をしっかり把握できていない場合、判断力が低下しても家裁に申し立てられず、肝心の後見を開始しないままになってしまう可能性が生じることです。常時本人と生活を共にして、高い意識で準備できるならよいのですが、そうでない場合、せっかくの任意後見契約を生かせないことになってしまう点に注意しなければなりません。
【移行型】 任意後見契約と同時に、「見守り契約」や「財産管理事務委任契約」などを締結しておき、判断力があるうちはこれらの契約でサポートしておき、判断力が低下した時点で「任意後見契約」に切り替え、家庭裁判所に申し立てるタイプ
当事務所でお勧めするのはこの【移行型】です。「見守り契約」等を同時に結ぶことで【将来型】のような本人を放置してしまうリスクを避けることができるからです。「見守り契約」や「財産管理事務委任契約」をわざわざ結ぶのは手間も費用もかかりますが、結ばないことで本人の財産や生活を無防備にさせてしまう危険性の方がはるかに大きいと考えます。
また、これらの契約を結ぶことで、「判断力は大丈夫だが、身体的に衰えて財産管理が事実上できない」といったケースにも対応できるのも強みです。
「見守り」なのか「財産管理」なのか等詳細は、現在の状況や将来のリスク・費用等を考え、最もバランスのとれたものにすることが望ましいでしょう。
こんなことやあんなことをお手伝い
財産管理契約や見守り契約と死後事務委任契約もセットで備えて万全に!
※ うまく活用すれば財産の使い込みを防止できる。
※ 後見信託も同じメリット
※ ただし、家族信託は、任意後見制度を補完するものと考えるべき
なお、後見信託は、任意後見制度では利用できない。
※ 信託のデメリットは、事実上財産管理に限定された契約であること
実務上必要になることが多い細々とした契約(公共料金の解約や締結、施設入所の際の契約など)には対応しづらい。
そういった手続きは後見人の方が進めやすい。
判断能力は衰えていなくても、身体の衰えにより、預貯金の管理や様々な支払手続が難しくなった場合に備える契約です。
任意後見契約は、判断能力が衰えた後、家庭裁判所の審判を経て後見監督人が選任されるまでは効力が発生しません。
そのため、それ以前に財産の管理事務を任せたい場合は、本契約が必要となります。
☞利用例